第9回タクシーWGで国土交通省に宿題

 交通政策審議会タクシーWGの第9回会議が先ほど終わりました。本日の焦点は冒頭でした。

 国土交通省が7月3日の第8回WGに協調的減車を盛り込んだ「現時点での考え方」を示し、翌週の7月11日に全国のほとんどの地域で増車を困難にする通達を出したことを受けて、内閣府規制改革会議が7月31日、国土交通省の方針を真っ向から否定する「タクシー事業を巡る諸問題に関する見解」を出してきました。本日WGデビューの奥田旅客課長がそのことを報告した後の質疑応答です。

 全乗連副会長の坂本委員が巻き舌で「怪しからん」と一席ぶった後、当WGエースストライカー佐々木委員の登場です。佐々木委員は「感情的になってはいけません」と坂本委員をたしなめてからスタートしたのですが、話していくうちに徐々にヒートアップし、最後は「ちゃんとした情報を与えてもなお、このようなことを言う人は判断力に問題があると思われるので、審議会の委員を辞めてもらう必要がある」まで言ってしまいました(笑)。坂本委員と佐々木委員のどちらが感情的になっていたか議論が分かれるところですが、私は両委員の趣旨にほぼ全面的に同意です。

 そしてそこから矛先は事務局の国土交通省に向かいます。「言われっぱなしでいいのか」「文書で反論しろ」「公開の場で議論しろ」・・・。これも当然の流れです。

 規制改革会議の見解に対する国土交通省の見解は文書ではなくコメントとして出たのですが、これが中途半端というか、はっきり言えばお粗末なものでした。

 規制改革会議が国土交通省を批判する最大の根拠、いわゆる一丁目一番地は「規制緩和により消費者利益がもたらされた」です。具体的にどんな利益が消費者にもたらされたのか私にはさっぱり分からないのですが、国土交通省はこの部分をあっさり認めてしまいました。「おいおい待てよ」と言いたくなったのは私だけではないでしょう。

 この部分はタクシーの規制議論の焦点であり、国会でも100%議論になります。国会議員から「タクシーの規制緩和で消費者にもたらされた利益とは、具体的に何ですか」と質問されたとき、今日も参考資料として出した「事業者によるサービス改善の取り組み集」を見せれば済むと国土交通省が思っているとしたら、ちょっと国会を舐め過ぎです。おまけにその「取り組み集」の一丁目一番地に掲載した企業が倒産しているのですから何をかいわんやです。

 規制改革会議の文書を作った中条潮委員(慶応大学商学部教授)はそもそもタクシーの規制撤廃を言い出した張本人で、規制撤廃が失敗した現実を認められずに意固地になっているという発言が会議でありました。国土交通省幹部も同種のことを言っています。私もそうではないかと思います。しかしです。意固地になっているのは中条教授だけでしょうか? 国土交通省自身が意固地になってやしませんかと、私は問いたいところです。

 国土交通省は、タクシー利用者のため、乗務員のため、事業者のため、ここは自らの失敗を認めるべきでしょう。官僚機構にはそれができないと建前を言うなら、いつものように大臣決済を求めればいいではありませんかと申し上げます。総選挙前のこの段階で、「派遣業法の対象分野拡大とタクシーの規制緩和は行き過ぎでした。申し訳ありません。反省に基づいて以下のように改善します」と頭を下げたくない政治家が居るとは私には思えません。そんな内閣があるとは思えません。官僚はいつものように「大臣の独自の判断」を振り付ければいいだけです。「できない」とは言わせません。

 今日のWGの後半は「利用者のニーズに合致したサービスの提供について」および「悪質事業者対策について」でした。感想は「やはり官僚にビジネスは分からないのかなあ」です。この部分は雑誌の連載に回します。

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タクシー会社の廃業

 タクシー会社の廃業のニュースがちらほら出ています。昔はナンバー権があったので買収が成立したのですが、今は単に廃業です。

 これは同業他社にとっては、正直ベースで「いいニュース」です。減車が進みますから。自分が倒れる前に他社が倒れてくれというのが、タクシー経営者の正直なところのようです。

 それが自由競争と言ってしまえばそれまでなのですが、あまりに悲惨です。もう少し、やりようがあるのではないかと感じざるを得ません。

 昔のようにナンバー権を簿外資産として成立させよという議論が成立しないのは分かっています。タクシー事業をコツコツと真面目にやっていればナンバー権ではない簿外資産が積み重なっていくような仕組みはできないものでしょうか。そのようにした方がタクシー利用者のプラスにもなると思うのですが。

 この件については個人的にアイデアを持っており、いろんな人に話をしているところです。うまくすれば陽の目をみるかもしれません。

規制改革会議に聞きたい

タクシー事業を巡る諸問題に関する見解
平成20年7月31日
規制改革会議

タクシー事業を巡る諸問題については、国土交通省交通政策審議会における「タクシー事業を巡る諸問題に関する検討ワーキンググループ」(以下「WG」という。)において、平成20年7月3日に「タクシー問題についての現時点での考え方」(以下「現時点での考え方」という。)として国土交通省の考え方が公表され、今後WGにおいて、年末に最終答申をまとめた上で、必要な場合には道路運送法改正等の措置を講じる予定とされている。また、来年度の道路運送法改正前の駆け込み増車を抑制する観点から、平成20年7月11日に通達の改正が行われたところである。

「現時点での考え方」は、タクシー事業における参入・増車要件の引き上げ等、規制緩和の流れに逆行する内容を含んでいる。当会議としては、タクシー事業を巡る諸問題の解決にこうした規制強化はこれまでの規制緩和によってもたらされた消費者利益を害する恐れがあると考えることから、当会議としての見解を下記の通り示すものである。


1. タクシー事業については、平成14年2月に改正道路運送法が施行され、需給調整規制の廃止を柱とする規制緩和が行われた結果、新たな雇用を創出するとともに、待ち時間の短縮や多様な運賃・サービスの導入等、消費者利益の向上に貢献してきたというプラスの側面を忘れてはならない。

2. タクシー車両が増加したことに伴い、タクシー運転者の待遇が悪化し、過労運転による安全性・サービスの質の低下等を招いているとの指摘もあるが、統計データを見る限り、その根拠は薄弱である。賃金の減少や事故率の上昇傾向は、規制緩和と必ずしもリンクしておらず、特に法改正のなされた平成14年以降では、賃金の減少と事故率の上昇傾向は緩やかか、横ばい傾向にあることを踏まえれば、参入・増車抑制によりこれらを改善しようとの考え方には疑問があるといわざるを得ない。事故への対応は、台数規制ではなく、悪質な事故を発生させた運転手や会社に対する行為規制で対応すべきである。タクシー運転手の労働条件改善は基本的にはタクシー事業者の経営課題として、また、より広い社会政策を通じて実現されるべきものである。

3. 規制緩和により顧客獲得を進め経営改善を実現したタクシー事業者の実例もある。参入・増車抑制は、経営努力をしてこなかった事業者を利する一方で、優れた事業者の創意工夫を不当に制約する恐れがある。したがって、今後、タクシー事業者の経営の実態(厳しい経営環境の中で、需要喚起策等を考える体質の有無等)について調査・把握した上で、タクシー事業として特段にそれが必要であるならば運転手の適正な労働条件の確保につながる施策を含めて、積極的な経営改善を導く規制の枠組みの在り方について、検討を行うべきである。

4.タクシー運賃に関する規制緩和が、多様な運賃・サービス等、消費者利益の向上につながった面がある点を踏まえ、タクシー事業に関する一層の規制緩和を検討・推進すべきである。

なお、当会議としては、平成20年7月11日の通達のような監視対象領域を大幅に拡大する規制が法令によることなく、また審議会等での審議を経ることもなく、一府省内の手続きによって発出されたことは、極めて不適切で速やかに見直されるべきと考えており、またタクシー事業分野に限らず、通達等の形で規制の導入・強化等が可能となっている現状は根本的に改められるべきと考えている。

また、本件に関し、影響の事前評価(消費者の利益が損なわれることがないのか、所要の体制を整えた新規参入等が抑制されることがないのか等)が十分に実施されたのかという点についても疑義がある。今後、規制事前評価の仕組みを検討する過程で、改めて評価制度のあり方についても提言していく。

さらには、今回のタクシー事業における再規制が他分野に波及する可能性 についても重大な懸念を持っており、当会議として状況を注視し、必要に応じ行動していく所存である。
以 上
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 現実を見ない、理念先行の頭でっかちな文書が内閣府から出てきました。ここまで来ると旧ソ連共産党みたいなものです。「共産主義万歳」が「規制緩和万歳」に変わっただけじゃありませんか。

 規制改革会議の先生方に一つ聞きたいです。 「これまでの規制緩和によってもたらされた消費者利益」って、具体的に何ですか? 答えてくださいな。規制緩和して車をじゃぶじゃぶにして生産性を落として日本中で運賃を値上げしたマイナスを補うだけの「消費者利益」があるなら是非うかがいたいところです。

 最初に釘を刺しておきますが、規制緩和前から存在した多様な運賃やサービスを「規制緩和の果実」とするのは事実誤認なのでやめてください。

 最近の新聞記事もそうですけど、何も調べずに思い込みだけで偉そうなことを言う人が多くて困ります。特にこの文書は国民の税金が投入されているのですから罪は重いです。タクシー業界に発生しているこれだけの不合理を目の前にしていまだにこんなことを言うのは犯罪行為に近いと思います。規制緩和は目的ではなく手段に過ぎないことをそろそろ学んでください。

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マスコミのタクシーバッシング

 7月3日に国土交通省がタクシーの再規制の方針を打ち出してから、マスコミのタクシーバッシングが激しさを増してきました。

 他社様の記事をあれこれ言うのも何ですので、古巣の日本経済新聞の記事を俎上に載せましょう。本日から始まった「点検・タクシー再規制」です。見出しは「創意工夫の芽摘む恐れ」「激戦地仙台でも規制不要の声」。読みましたが、あまりの取材の浅さと「結論ありき」の分析の粗さに暗澹たる気分になりました。

 規制撤廃に伴うマクロとしての経営効率の悪化を認めながら、ごく一部の例外的な会社のコメントをもってこれを無視しようとする論理構成の稚拙さは、まあ百歩譲って黙認しましょう。しかし低料金タクシーや福祉タクシーが規制緩和によって生まれたという記述は完全に事実誤認であり、訂正ものです。日本経済新聞の記者はいつから年表も確認できなくなったのかと、OBとして苦言を呈します。

 市場メカニズムは確かに美しいです。しかし市場万能主義で済むなら政策金利も要らなければ労働基準法も独占禁止法も、証券取引法ほかありとあらゆる事業法が不要であり、もっと言えば会社法さえ要りません。この認識は日本経済新聞の編集局に在籍する人間の前提だと私は理解しているのですが、相手がタクシーとなるとその前提が吹っ飛んでしまうようです。新聞は理念より事実を書くものなのですから、曇りメガネを外して目の前にある「市場の失敗」を見てくれと、この記事を担当した記者とデスクには言いたいところです。

 勢いで書いてしまいましょう。どの会社とは言いませんが、日経が持ち上げたタクシー会社がダメになる法則についても、もう少し研究して反省して欲しいです。要は簡単に騙され過ぎです。

 と、ここまで日経をボロクソに言っておいて反対のことを言うのも何ですが、タクシー業界もこのように書かれる「空気」を形成している責任を自覚するべきだと思います。「世の中に通用するロジックで物事を語れる経営者が少なすぎる」、「交通政策審議会という公開の席で業界の首脳があんな発言をしているようでは記者が見限るのは当たり前じゃないか」、などの意見が私の耳に入ってきます。私はそれを完全に否定することはできません。

 後段の話はブログで書くには長くなり過ぎるので雑誌の連載に回します。結論的なことを言うと、今のタクシーに関する報道は総じて、タクシー利用者の利益を最大化する方向(≒タクシー乗務員、タクシー事業者の利益を最大化する方向)には向いていない気がします。そしてその責任の一端、というよりかなりの部分はタクシー業界にあると、私は考えています。逆に言えば、業界が変われば報道は変わるということです。

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第八回WGで業界が言うべきだったこと

 国土交通記者会に所属する記者さんと前回のタクシーWGに関して意見交換する機会がありました。そこでハッとする感想がありましたので、ご紹介します。

 前の記事でも書いたように、私自身は、国土交通省が減車という大決断をした時に、労働側委員がいつまでも労使間の問題を長々と話していることに腹が立っていたのですが、傍聴していた彼は、経営側委員が最後に「増車を止めてくれ」などの陳情まがいのことを言ったことに違和感をおぼえたそうです。

 正直言うと、私はその時、違和感は感じませんでした。しかしどうやらこれは私の感性が摩耗していたか、ズレた人たちの意見にカチンと来すぎて本質を見失っていたと認めざるを得ません。経営側委員、特に富田昌孝・全乗連会長がこの場で言うべきコメントがあったのです。

 「当局が有効な減車対策を行う場合には、業界は、血を流すことにはなりますが、出来る限りこれに協力するつもりです。適正な減車が成功した暁には経営効率が上がると思われるので、運賃値下げも不可能ではありません」

 これを言えば政治的にはもう「終了」でした。翌日の新聞各紙の紙面は、国土交通省及び業界に対してもっと好意的なものとなったでしょう。タクシー再規制の議論はポジティブな空気の中で進めることができたのです。そうなってしまえば、時限的な増車ストップなど何の議論もなく簡単に通ります。

 「惜しいチャンスを逃した」とその記者氏は言っていました。しかしまあ、あそこでその発言ができる天才的広報センスの持ち主は、たとえば政界なら小泉純一郎元首相くらいかなという気もします。言えなかったからといって「ダメ」とは私には申し上げられません。

 そもそも今回が最後のチャンスではありません。これからその線で発信していけばよいと思います。

 7月3日のタクシー問題懇談会シンポジウムの基調講演で、坂村健・東京大学教授は「日本人は権利ばっかり主張するが、それは得策ではない。責任や義務を負うことを表明し、その見返りに権利を獲得するのが成功の確率を上げる道だ」と話していました。技術の標準化などに関する数々の国際会議に出席して国益のやり取りをし、欧米勢のやりくちを見てきた人の言葉だけあって、説得力があります。

 「タクシー業界は国民や社会に対してこれこれこういう義務を負う。その義務を遂行するためにこれこれこういう適正なルールを決めるのが全体の利益になると考える」…これがどうやら大人の議論です。

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