運転者負担制、廃止論が大勢に〜国土交通省懇談会

●国交省賃金システム懇 運転者負担制、廃止論が大勢に

 国土交通省の「タクシー運転者賃金システム等懇談会」(座長=山内弘隆・一橋大学大学院商学研究科教授)の第4回会合が4日開催、クレジットカード・電子マネー決済機器使用料やハイグレード車の乗務料金など「運転者負担制度」の是非をめぐり集中討議した。生産設備投資や営業コストは本来、会社側が負うべきとの認識が多く占めた。

 全体として労働側(全自交、交通労連、自交総連)が原則全廃を主張し、学識者委員も「企業として社会通念上、好ましくないのでは」と廃止論を支持。半面、経営側(全タク連)は黒塗り車両の運送収入・賃金が高水準となる実態など乗務員間の公平性の問題や労使合意の上、採用している経緯を挙げ「できる限り廃止する方向で事業者を指導していく」と従来の見解を示した。労働側は「賃下げになる労使交渉の過程でやむを得ず受け入れている」と反論した。

 負担項目ではチケット、クレジット、電子マネーは廃止するべきとの論調が強まり、黒塗り車と無線システムには全タク連が公平性の確保を強調し平行線に。二種免許取得などの養成費用を中途退社した場合に変換させる契約をめぐっては、許容するスタンスが支配的となったなか、自交総連が反対を唱えた。

 関連して、一般にリース制賃金と称される「運収・利益還元方式」や名義貸し行為も議論したが、次回に持ち越した。

2/8付東京交通新聞1面より


 業界は、MKの賃金体系をおかしいと言っている以上、乗務員負担制度は全廃する覚悟が必要でしょう。MKのリース制を批判しつつ自分は乗務員負担制度を維持するなんてのは論理矛盾です。実にみっともない。この懇談会を奇貨として白旗をあげるべきです。

 この問題で事業者側が常に持ち出す「乗務員間の公平性」という議論が私にはさっぱりわかりません。有能な乗務員には黒塗りの新車などいい車をあて、月水金のシフトを回すのが企業として当たり前のことです。「乗務員を公平に扱う」というのは、はっきり言って経営の怠慢の言い訳でしかありません。普通の会社がやっているように人事評価を導入するべきでしょう。

 どうもタクシー会社は歩合制という極めて便利な制度を持っているためなのか、社員をモチベートする他の手段について探求が足りない気がします。東京の日本交通や名古屋のつばめ自動車など例外はありますが、多くの会社はそれができていないと感じます。

 乗務員負担の廃止は労組が急先鋒ですが、その結果は必ずしも労組の好む方向に進むとは限りません。おそらく、むしろ逆でしょう。労組がそのあたりを理解しているのかどうか、少し興味があります。

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格安タクシー5社が提訴へ 運輸局の走行250キロ規制

格安タクシー5社が提訴へ 運輸局の走行250キロ規制
2010.2.2 11:45

 大阪府内で初乗り500円(2キロ)のタクシーを運営する5業者が3日、国を相手取り、近畿運輸局が定めた走行距離基準の取り消しを求める訴えを大阪地裁に起こす。近畿運輸局は今年から、大阪市内などで毎日営業しているタクシーの走行距離の上限を250キロと定める規制を実施。格安タクシー会社を中心に反発の声が相次いでいた。

 訴状によると、他地域は高速道路での走行は距離基準の対象外とされているが、近畿運輸局の基準では高速道路での走行距離のうち50キロまでが距離基準に含まれていると指摘。「事業活動に対し過度の制限を行い、裁量権の乱用」と主張している。

 近畿運輸局は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/100202/trl1002021149001-n1.htm


 まあ、こうなるでしょうね。誤解を恐れずに言うと、裁判になること自体は私は「良いこと」だと思います。これで近畿運輸局が勝てば判例ができ、一歩前進となります。走行距離規制は次期道路運送法での減車メカニズムの道具として極めて有効です。

 私たち関係者は、このような重荷を背負った近畿運輸局と担当者を全力でバックアップする必要があると思います。彼らは大阪だけでなく全国のタクシー利用者と業界のためにリスクを負ってくれました。それに報いる必要があります。具体的には政治家に対して「近畿運輸局よくやってくれた」の声を届けるべきでしょう。私もそうします。

 役人は楽をしようと思えばいくらでも楽ができる商売です。近畿運輸局だって過去を継続し「なにもしない」という選択肢だってありました。しかし彼らはそうしませんでした。

 東京の方を見てください。減車に関して自らは何のリスクも負わず、公正取引委員会の言うがままにすべてのリスクを業界に押し付け、経営者を利益相反状態に放置したまま「減車しろ」と言うだけで仕事した気になっている役人も居ます(最近は少し改心したようですが)。これに比べて近畿運輸局の仕事ぶりは見事です。

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減車率に応じて累積違反点数減点〜国交省がパブコメ

 「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法に基づき実施する一般乗用旅客自動車運送事業の供給輸送力の減少に伴う違反点数の特例措置に関するパブリックコメントの募集について」というパブリックコメント募集が出ました。詳細は国土交通省(政府)サイトに行って御覧下さい。(それにしても、わざわざコピペしにくいPDFにする意味がどこにあるんでしょうね…)

 内容は、要するに減車率に応じて累積違反点数を減点しますという話です。やっとまともな減車インセンティブが出てきたと評価するべきか、遅すぎると批判するべきかについては、まあ置きましょう。

 問題なのは、同じ減車率なら、たくさん違反している会社ほどたくさん減点される構造になっていることです。累積点ゼロの会社は全くメリットになりません。不良会社に有利で優良会社に不利な、おかしな制度になっています。私が30秒で気付くことを、どうして役人は気づかないのでしょう。

 やるなら掛け算ではなく引き算でしょう。特例として「マイナスの累積点」という概念を入れるくらいの頭の柔軟さが欲しいところです。私なら「N台減車したらaN点を減じる。マイナスの累積点を認める」と、シンプルにやります。この方式ならM&Aによる減車がスムーズに進みます。

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米国でのタクシー規制と独禁法の関係

 タク懇の新年会で出た話題の続きです。富田昌孝会長が米国の弁護士事務所に委託した「米国のタクシー事業規制に関する調査報告書」という資料があります。今回はこの話を書きます。

 昨年の夏ごろでしたでしょうか。独禁法とタクシー規制との関係についての国土交通省の見解がどうも国民の利益に反しているのではないかと私は感じ、富田会長にそのことをお話したところ「実は私も全く同じことを考えて、アメリカの弁護士事務所に調査を依頼したんですよ」とおっしゃいました。「ちょうど報告書が届いたところです」とのことだったので「ぜひコピーをください」と頼み込んで一部いただきました。その時はマル秘扱いだったのですが、もうオープンになっているので良いでしょう。

 このレポートの結論は極めて明快です。数式で書けます。

公的談合>反トラスト法>私的談合


 これに尽きます。州議会など公的な談合機関で公的に決めたことは反トラスト法の外にあるとの見解にて、すべての判例が一致しています。

 アメリカは英米法の世界なので法律同士が形式矛盾していても別に大丈夫であり、どっちが強いかは裁判所が決めます。タクシー規制に関して裁判所の判例は軒並み上の数式であるというのがレポートの結論です。

 日本は大陸法なので、需給調整の核である地域協議会を次の道路運送法改正でも継続する場合、これは独禁法の外にあることを明記する必要があるでしょう。そもそも独禁法が想定している談合は「値段を上げるための談合」ですが、タクシーの減車は「運賃を下げるための談合」です。現状でも独禁法の外にあると国会答弁か何かで言ってしまえばいいのにと私は思います。

 話は変わりますが、私がタクシー問題懇談会の事務局長を辞めたことについて、一般紙の記者からは「何があったんですか」など問い合わせがいくつかありましたが、今までのところ業界紙の記者からは皆無です。記事にしているのに事実確認の取材さえありません。一次情報への感度がやっぱり違うんだなと感じました。

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タク懇新年会、富田会長吠える

 先ほどまでタクシー問題懇談会の新年会がありました。三日月大造国土交通大臣政務官を基調講演の講師にと言い出し、交渉したのがほかならぬ私だったので、顔を出してきました。

 先週の金曜に講演時間どんぴしゃの16:00から衆院本会議(補正予算案採決)が入り、気が遠くなりましたが、何とか富田会長が助けてくださり、また予算委員会が延びて本会議の開始時刻が少し遅れたおかげで三日月政務官も駆けつけてくださいました。待鳥康博・全国自動車交通労働組合連合会書記長には準備段階で各種骨を折っていただいた上に今日も他の予定をキャンセルして参加くださり、感謝感激でありました。お名前は全員言えませんが、ご来場の皆様に感謝します。もちろんタク懇メンバーにも。

 これで私のタク懇におけるすべての仕事は終了です。実に楽しい2年半の経験でした。この日も「一休計画」や「血判状」など私が造った言葉が何度も使われているのを聞いて感じるものがありました。

 本日、印象深かった言葉を紹介します。

「業界が生き残るために減車は絶対に必要だ。減車しなかった会社にペナルティーがないのでは業界は救われない。結局、最後は自分たちの政府を信用するかしないかだ。私は信じる」(富田昌孝・全乗連会長)


 この日の富田会長は、私がかつて見たことのない迫力でした。この会長なら、もしかしたら東京の減車は成功するかもしれないと感じました。

「特定事業計画に減車を記載しなかった、もしくは不十分な数字しか書かなかった事業者には、関東運輸局は当然のことながらその理由を聴くだろう。納得できる説明がなければ、納得できるまで聴くだろう」(各務正人・全乗連理事長=前近畿運輸局長)


 すべての役人が最初からこう言ってればいいんですよ。せめて。

「大阪の運賃に関しては安全サイドから是正していく。タクシーは成長産業になり得る」(三日月大造・国土交通大臣政務官)


 時間は短かったのですが、講演するつもりでレジュメを作っていたことが良くわかるお話でした。減車や道路運送法本法の改正に関しては業界はこの人に意見を集めるのが正解だなと感じました。

「挨拶をするつもりはなかったのですが、会場に来たら『減車に関しては事業者も労組も利益は一致する、共闘するべきだ』と言われた。組合としては共闘という言葉に弱いので…」(待鳥康博・全国自動車交通労働組合連合会書記長、懇親会乾杯の挨拶で)


 待鳥さんに「労使共闘」云々言ったのは私です。しかし辞めた事務局長を待鳥さんの説得に使うタク懇副会長って、けじめがないんじゃないかと思いますよ(笑)。

 冗談はともかく、待鳥さんはお話をしていても「組合臭さ」「イデオロギー臭さ」を全く感じさせない人で、今日はそのことを素直にぶつけてみました。待鳥さんの回答は実に見事でした。「組合職員は組合員の利益を最大化するために存在する。協力した方が組合員の得になるなら協力する。戦った方が得なら戦う。その意味ではビジネスマンに近いと考えている」。なるほどなと感じ入った次第です。

 今回はタクシーずっぽりではない本省の課長さんも来ていて、「タクシーの増減車に関する合成の誤謬が良くわからない」などと言うものですから太田和博専修大学教授と私で小一時間ほどご説明しました。太田先生は羊の例で説明されていました。交政審での藤井聡教授と同じ正統派パターンです。役人向けの説明ロジックはないものかと考えていたところ、帰り道に思いつきました。ご紹介します。

日本経済のデフレギャップ(供給過剰)が埋まりインフレ懸念が生じたため政府として予算を削ることになりました。あなた自身は自分の課の無駄な予算を削る方が国益であると正しく理解しています。それでも「この予算は必要だ。増額するべきだ」と言い張るでしょう? 総論賛成、各論反対。それがタクシーの供給過剰問題と減車の難しさです。


 結構な数の役人がここを見ているのですから、この説明を早く思いついてここに書き、周知しておけばよかったです。それをやっておけば「減車しないからといってペナルティーはない」とか「インセンティブがなければ減車できないというのでは困る」などのバカな発言は出なかったかもしれません。

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