第12回タクシーWGは国土交通省がボコボコに

 第12回タクシーWGが先ほど終わりました。今回は事務局国土交通省が最初から最後までボコボコにされました。第4回の時にも集中砲火がありましたが、今回はそれ以上です。

 確かに不出来なペーパーでした。委員の多くは「時間を返せ」と言いたかったでしょう。国民目線からすると「税金を返せ」ということになりましょうか。会議はこのような感じでした。

 待鳥委員「7/3日以降の意見が全く反映されていない。勝手な仮説を現実に優先させて議論を構築している。供給を止める話はあっても過剰分を削る話がない」

 佐々木委員「議論が何も進んでいない。規制緩和のおかげで本来660円のサービスが710円になり利用者の不利益になった反省がどこにもない。最も大切な供給過剰対策も7/3から変わっていない。もうワーキング自体をやめたらどうか」 

 今村委員「6月のワーキングで、この議論をもとに道路運送法の改正案を次期通常国会に出すと聞いた。どこにその骨子が書いてあるのか全く分からない」

 田中委員「具体性が全くない。需要が減ったのに供給が増えたこと自体が最大の構造問題であるのに、その部分に切り込んでいない」

 富澤委員「何でも自由化すればいいという市場原理主義が失敗した。タクシーサービスは規制緩和で良くもなっていないし安くもなっていない。その現実認識が書かれていない」

 関委員「非常に分かりにくい。タクシーには新しいルールが必要だと思うが、そのルールがどこに書いてあるのか。誰がルールを作るのかも書いていない」

 すべて同感です。国土交通省はよくもまあ、このレベルのペーパーを恥ずかしげもなく出してきたものです。委員が怒るのは当たり前でしょう。

 国土交通省自動車交通局の株価は7/3に付けた最高値から3回連続で暴落し、今やジャンクです。この官庁にタクシーの再生ができると期待するのがそもそもの間違いであって、利用者も労組も業界もさっさとこの役所を見限り、地方分権推進に舵を取る選択を真面目に考える時期なのかもしれません。

 ワーキングの最後、本田自動車交通局長がたまりかねて発言しました。そのなかで、次期道路運送法改正案の骨子のうち3つが明らかになりました。

 1.省令として発した特定特別監視地域を法律に書き込む
 2.悪質事業者を排除するため行政による事後チェックを強化する
 3.同時に行政による事前チェックを強化する

 厳しいことを言えば、いかにもビジネスを知らない法学部頭という感じです。そもそも国土交通省が設定した今のタクシーの競争条件が「増車を野放図に促進し、悪質事業者と悪質乗務員を利するルールである」ということに、なぜ気付かないのでしょう。委員のほとんどが気づいているのに、事務局だけが気づいていないように思えてなりません。

 うがった見方をすれば、国土交通省はタクシー事業者をすべて「法令違反ギリギリ」のラインに追い込み、監査の社会的需要を増やし、監査官を増やして自分の組織を拡大したいのかとさえ思えます。要するにマッチポンプによる焼け太りです。もしこれを意図的にやっていたとしたら、国家国民への犯罪ですが。

 国土交通省がやるべきことは、「質の向上を目指して努力する事業者や乗務員を利するルールを設定すること」です。この新しいレジームでは、事業者や乗務員は、処分という罰を恐れて動くのではなく、事業の拡大や給料アップというメリットを求めて動きます。そのために顧客満足度の最大化を目指します。役所ではなく利用者を見て仕事をします。

 極端な話をすると、このサイクルが回れば監査は要らなくなります。地方運輸局の職員は、監査で業者を罰することではなく、地域協議会等ででタクシーの付加価値を高め市民生活を向上させるために汗をかくことになるでしょう。オイコラと権力を誇示することが大好きな一部の例外的な人を除き、そちらの仕事の方がよほどやりがいがあると思うのですが。

 旧レジームが監査という「鞭」で制御する考え方だとすると、新レジームは「飴」で制御する考え方です。タクシー業界の飴が「供給する権利(たとえば認可車両台数)」であることは言うまでもありません。

 最も単純なソリューションを示します。「全体に毎年10%(この数字は地方によって変える)のマイナスシーリングをかける。ただし優良事業者には増車枠を認める」とやればいいんです。主計局のマネですが特許料を請求してくることはありますまい。悪質事業者を選定するより優良事業者を選定する方が100倍楽ですし建設的です。「悪質事業者を退場させる」と考えるから脱法行為だのイタチごっこだのとなるのです。

 ちなみに減車に関して「財産権の侵害の恐れがある」という話がありましたが、車の寿命は5年くらいなので毎年10%の減車なら「動いている車を止める」という話にはなりません。認可枠が私的財産であるという主張は国土交通省自身が否定しており、裁判所も認めないと思います。少なくとも国税庁は認可枠の資産計上をタクシー事業者に求めていません。

 基本的に、タクシーの看板を掲げて公道を走る権利を公的セクターが数量的に制御することの、どこが悪いのか私には全く分かりません。そしてその制御権を主権者から委託された公的セクターは、その権限を最大限に活用してタクシーの質を高めるとともにタクシーサービスを安く提供する義務を負うという形にすればいいのです。

 以上のロジックで道路運送法を書き直すことは、大きなチャレンジかもしれませんが不可能ではないと思います。行政官として、歴史に残る仕事になるでしょう。

 国土交通省への期待は三回連続で裏切られましたが、私は希望を持っています。というのは、あれだけ叩かれても事務局は全くくじけていませんでした。あれは隠し玉を持っている顔です。次回のWGに期待いたします。

コメント

隠し玉予想

国土交通省が持っている隠し玉とは、減車基金の後押し政策ではないかと思います。一台あたり減車補償手当てを仮に300万に設定すると、東京特別区55000台の三割ですから16500台が割り当て対象となり、ざっと総額4百9十5億円の減車基金が必要です。その費用を残りの38500台で負担すれば、一台あたりの負担金は約128万6千円弱となります。
利息計算を考慮せず十年120回分割払いで月々一万円ちょっとの支払いで償還できる計算となります。

この基金設立を絡めての新たな減車措置を講ずるための法整備を考えているのではないでしょうか。

補償金額を引き上げると減車が一気に進むと思われますが、そうした場合残りの車両台数一台あたりの負担が増したり、実車率の過度の向上を招いてしまいバブルの二の舞をまね胃たたりするので用心が必要です。

こんなん出ましたけど。

減車基金

減車基金のアイデアは前回か前々回に佐々木委員が提示し、ほとんど賛同を得られなかった記憶があります。これですと国が正式にナンバー権を認めることにもなります。アイデアとしてはあり得ると思いますが、実現はちょっと難しいのではないかと感じます。

国土交通省は昨日の資料の中に産業活力再生特別法のスキームを潜り込ませました。このラインで減車を考えているのかもしれません。ただ、タクシー車両なんて5年で寿命になるものなのに、そんな大げさなことをやる必要はないと思います。

簡単な問題を難しく解こうとしているように思えて仕方ありません。

基金には負担割当のリスクが伴いますから賛同が得られにくいのではないでしょうか。
このまま需要が低下して行けば年金に関わる偽装倒産の二の舞問題に発展する可能性もあります。ある限界以上の負担は国が連帯保証して免責する手もあります。(それはないですかね?)
資産として認めない姿勢は理解てきますが、自由化以前倒産の場合、管財人を交えての営業ナンバーの売買が行われて来た経緯や、個人タクシーの譲渡金額が車両資産だけでないのは組合組織、組合員当事者、税務署と周知です。

減車の手法

大阪では、再規制すなわちナンバー権の復活を予測して参入してきた投資家達がいます。
減車にインセンティブを与えることは、真面目な業者より、彼らを利するだけで、どうかと思います。
悪貨の退出による需給調整はできないものでしょうか。これを言うと同業者から袋叩きにされるかもしれませんね(笑)。
ただ、行政の監査は書類監査で重箱の隅をつつく手法です。これでやられたら、良貨が駆逐されてしまいます。
「それはやったらあかんやろ」と同業者すら思う経営をしている業者には退出していただく...そんな制度設計ができないか、考えているこのごろです。

だから開示せよ

ですから、少なくともああいう働かせ方でまともな人材は集まらず、そのような人材でもっともらしいサービスなどできないですよ。旧レジームは「わからなければよいい、ばれなければよい」という哲学からは逃れられませんので、業界の自律性や向上心は永遠に望めません。
ですから、管理人も書いていた労働条件の開示をやるべきです。
親(行政)と、もういい大人になったどら息子(業界)が「何々君もやってるんだからいいじゃん」「だめよ、いい子になりなさい。みんなが怒ってるわ」「いい子になってほしいんだったら、お小遣い(需給調整)ちょうだい」「お小遣いあげたのに、また悪いことやって」「じゃあもっとちょうだいよ、ママ、僕が遊んで暮らせるくらいに」−−なんて猿芝居をいったいいつまで続けるつもりですかね。
早晩、利用者からも求職者からも見捨てられます。
開示は、世間にさらして通用するかしないか、やってみること。どら息子も自分のしていることがどういうことかわかるでしょう。世間一般の鏡で自分をじっくりながめたらいい。
自律的な向上、イノベーションの第一歩はここから歩むべきです。

>>大阪の事業者様
 ナンバー権狙いの事業者に果実を与えるのは内心忸怩たるものがありますが、大事の前の小事ということになるのでしょう。

 直接的に悪貨を退出させるのは至難だと思います。全社を後ろ向きベルトコンベアに載せて、いい会社だけ救うという形の方が現実的ではないかと思います。こうするとたぶん協会が機能し始めます。

>>都内の関係者様
 労働条件の開示はかなり有効だと思います。タクシー事業をめぐる市場の中で、唯一機能しているのが労働市場というのが現実ですから。

 タクシー業界の外の人は、どうしても消費市場で考えるのですが、そもそも流し地域のタクシー経営者がどれだけエンドユーザーのことを知っているか、大いに疑問ですよね。知らないのに考えられるはずがありません。

毎年10%の乗務員の首切りをどうやって行うのですか?
台数が減っても乗務員が減らなければ走る車の台数は減りません。
稼働の悪い会社の車をいくら減車しても何の効果も無いと思うのですが。

10%の首切り?

 すみません。あなた、本当にタクシー関係者ですか? 自分がどれだけ現実離れしたことを言っているか分からないのでしょうか…

 業界以外の人なら説明しますけれど、業界の中の人間だと言っている人には説明する気になりません。

管理人さんへ

> 大事の前の小事ということになるのでしょう

「投資家達」は大阪の混乱のA級戦犯の一部で、彼らに恩給をあたえることは、これからの士気に影響を与えます。
しかし、他に手段がなければ、致し方が無いのかも。


> 直接的に悪貨を退出させるのは至難だと思います。

まあ、漠然とした表現で議論して、言葉遊びに終わってはダメなんですが、感覚的には判ります。
ただ、協会の状況も大阪は最悪で、機能し始めるには、難しいだろうなあ。

協会の求心力

> 大阪の業者様

国土交通省が鞭主導の旧レジームからニンジン主導の新レジームに方針転換したら、協会の求心力は一気に高まると思います。ニンジンを配る情報を上げる側になるのですから。

大阪の状況は漏れ聞いていますけれど、ほんと仲悪いみたいですね…。「公」の意識でまとまる文化が薄いのか、個性の強い人が多いのか、はたまた多田んからの歴史のなせるわざなのかよく分かりませんが。

平均勤続年数

>>タクシー関係者様

少し言いすぎました。

タクシー乗務員の平均勤続年数は数年です。要するに放置していれば毎年20%程度が辞めます。なので、たとえ毎年10%減車しようと、「クビになる」乗務員さんはゼロです。

平均勤続年数10年などという超優良会社が増車枠を貰えず10%の減車をそのまま食らうことは考えられないですし、もしそんなことがあったら地方運輸局はどこに目を付けているんだという話になるでしょう。

台数が減っても乗務員が減らなければ走る車の台数は減らないというのは間違っていますか。
台数だけ減らすと土日稼働が増えて更に悲惨な事になるとみんな言ってますよ。

乗務員は減ると言っているのですが

「クビにしなくても自然に減る」と私は書きました。

人のコメントをきちんと読んで理解する努力をしてください。難しいことは言っていません。

それができない人のコメントはこれ以降、黙って削除するかもしれません。ここに来てくれる人にとってノイズですから。

このコメントを読むと自然に毎年20%程度が辞めるとありますが、新規入社希望の人はタクシーに入れなくなるという事ですね。
タクシー求人禁止、新規入社禁止とやると一年で業界として平均20%減らせられますね。
果たして全ての会社がそんなタイミング良く退社する人が現れる物でしょうか?
40%辞める会社もあれば5%未満しか辞めない会社もあるはずです。
この辺の事柄を明確にしないと単なる机上の空論になってしまいますね。

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